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お気に入りと出掛ける わたしのお気に入りvol.6 大森宗憲さん「大震災から復活した特注の革靴」

2017-12-25

大森宗憲さんは石巻在住の茶道の先生。ファッション愛好家で、靴だけでも40足ものコレクションをお持ちです。大森さんは東日本大震災による水害に遭い、自宅の1階が浸水。玄関に収納していたお気に入りの革靴も、水浸しになってしまいました。もう二度とその靴を履くことはないだろうと思っていた大森さん。ところが「くつリネット」にその靴を委ねたところ、驚きの展開が待っていたのです。

自分の足に合わせて作ったこだわりの一足

私の特別な一足は、ヴィトンの革靴。3カ月かかってフィッティングした特注品です。ヴィトンの吉田さんという方が、何度もイタリアに送り返して1ミリ単位で調整し、完璧に僕の足にフィットした一足に仕上げてくれたものです。私よりも、むしろ吉田さんがとことんこだわっていましたね。

底のラバーを見ると、形が左右で違うんです。私の足の形、そのままに仕上げてあるからです。私の足のサイズがちょっと変わってるんですよ。足の甲が左と右で違っていて、どちらかにあわせると、どうしても靴がすぽーんと脱げちゃうんです。だからヴィトンのイタリアの工房で、特注の靴を作ってもらいました。

当時はとてもお気に入りで、謝恩会やパーティーなどここぞというときに履いてました。紐がなくて、スッと脱げるのも、いいんですよね。もちろん気に入っている一番の理由は、抜群のフィット感です。足袋と同じですよ。私のように茶道をやっている人は、銀座の足袋屋さんで自分サイズの足袋をつくるんです。足袋がフィットしていなくてしわが寄るっていうのは、一番みっともない。ジャストフィットが基本です。それはデザイン的な部分以上に、大切なことだと思います。

震災後は下駄箱が開けられなかった

この靴にはとても愛着があったんです。しかし、2011年3月11日、東日本大震災で津波が来て、家が何日も水浸しになり、この靴が入っていた下駄箱も浸水してしまいました。。

あのときは、翌日東京に行く予定の金曜日で、ウキウキしていました。それが地震が来て、とてつもない揺れで、トランポリンの上にずっといるような感じでしたね。棚という棚が全部倒れて、冷蔵庫の扉が吹き飛んでしまったくらいです。私は片付けをしていたのですが、そのとき警察の方に「水が来ているから逃げろ!」と言われて。それから間も無く水がドーっと上がって来て。そのまま引かずに5日。ポンプで吸い上げるまで水浸しのままでした。

その時に受けたダメージを見たくなかったので、4年間ヴィトンの入っている靴箱のふたすら開けず、そのままにしていました。他のものは全部片付けたのに、なぜかその靴箱だけは開けられなかったんですよね。

ダメかもしれない、でも履きたい

でもふと、今までのものを断捨離しようという気持ちになったときに、そのヴィトンの入っている靴箱を開けたんです。そうしたら、塩水に浸されたことで真っ白になっているわけです。それこそ、イソギンチャクでもついてるような感じで。

正直に言うと、そのときは捨てるために箱を開けたんです。震災のちょっと前からヴィトンの靴を履かなくなって、他のブランドに気持ちが移っていたので。もうたくさん履いたし、時代の流れでデザインもちょっと古い。そのうえ震災で水浸しになってしまったのだから、もう御用済みかなと思っていたんですよ。

でも箱を開けて、ひどいダメージを受けているのを目の当たりにして「これはダメかもしれない」と思ったときに、突然もう一度履きたい気持ちになったんです。過去の思い出が蘇って来たんですね。震災前に何度もフィッティングして、イタリアに送り返したことや、ヴィトンの吉田さんが、とてもこだわって作ったこととか……。

それで真っ白になってしまった靴に、そっと足を入れてみました。そしたらやっぱり自分も、靴も当時のサイズのまま。ぴったりとフィットしましたね。

ブランドものは長く使うためのもの

くつリネットさんに、一度グッチのブーツを出した経験がありました。単にピカピカにするのではなく、もともとのグッチの靴の持ち味のまま、きれいになって仕上がって来た。「これは職人さんがこだわっているな」と分かった。「もしかしてヴィトンもいけるかも」と思って一応出したんです。

ヴィトンの靴を出したときも、「『カビ菌の除去や臭いの緩和はできますが、痕跡は残るかもしれません』」、『シミは生地そのものが変色していると取りきれない可能性があります』」、それでも構いませんか?
」ってちゃんと確認してくれたんです。とても信頼できて「またこの靴が履けるかもしれない」と思いました。もしこの靴を蘇らせることができなかったら、その職人さんがイチから同じ靴を作ってくれるんじゃないかな?って思えるくらいの、信頼がありました。

それで、この仕上がりです。元どおりでしょう? クリーニングが終わったら、すぐに履いて京都に行きましたよ。15、6年前の靴とは思えないくらいの履き心地とデザイン。靴底が鳴らす音もすごく良くて。「ブランドものって、長く使うもんだな」って改めて思いました。愛着ですよね。

身につけると自分がブランドになれる

私はブランドが、好きなんです。自分を表現する手段ですね。お茶の先生というと、すごく生真面目なイメージがあって、私がブランドの服や靴で着飾って「お茶の先生をやっています」と言うと、「えっ」と驚かれる。その反応を引き起こす存在感が、自分の個性だと思うんです。ファッションは”まとう”もの。香水と同じです。私はブランドをまとって、自分自身がブランドになりたいのだと思います。

実はまた頼みたいものがあるんですよ。東京ドームで中田英寿さんと小泉純一郎さんと対談したときに履いた靴。僕はそこで、なぜ震災の後すぐにお茶の教室を再開したのかをお話ししました。そのとき履いていた靴もヴィトンで、まだ1回しか履いてないんですけど、自分で手入れしたら失敗して色が濃くなってしまったんですよね。やはり大切なものは、プロの手に委ねるべきですね。

 

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