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服と着る人の心地よい関係Vol.2「『ファッション』ではなく『スタイル』を見つけてほしい! これからの服のメンテナンスは信頼とデジタルが鍵に。」

さまざまな男性ファッション誌の編集や創刊に携わり、ファッション業界を牽引してきた干場義雅さん。洋服への想いは強く、信頼関係があるところにしかクリーニングを出さないそうです。
干場さんにとってファッションとは?お話を伺いました。

ファッションではなくスタイルを多くの人に見つけてほしい

ーー干場さんはどれくらいの頻度で服を買い換えるのでしょうか?

頻繁に新しい服を買うことはなく、一着を長く使うタイプです。20年前のスーツやコートをいまだに着ていたりします。

流行(トレンド)の洋服を追いかけ頻繁に買い換える人もいますが……。「流行」は流れて行くと書く通り、私は、流されて着たくはないと思っています。流れていくものに消費をしても何も残らずに、お金の無駄になってしまうからです。1万円持っていれば、その1万円を最適に使いたいと思っているのです。

この考え方は、ファッションに限らず当てはまります。お母さんが家族のために家計をやりくりして、本当に必要な物を買う感覚に似ているかもしれません。

ファッションやライフスタイルの情報を発信する際も、流行を追いかけるだけにならないように気をつけています。個人的に心がけているのは「ファッション(流行)ではなくスタイル(型)」を。多くの人に自分自身の型を見つけてほしいという気持ちでコンテンツを作っています。

流行だからワイドジーンズをはく。トレンドだから、スキニージーンズをはく。流行や情報ばかりに流されてしまっていては、どんなにお金を持っている人でも、カッコよくはなれません。髪型、メイク、ジャケット、スカート、ジーンズの太さまで、誰にでも自分に合うものは必ずあります。だからこそ、まず、どんな洋服が自分に似合うのかを見つけられる人を増やしたいのです。

毎日のスタイルはセンスではなく「TPPOS」で選ぶ

ーー毎日着るものは、どうやって選んでいるのでしょうか?

その日の仕事内容や会う人に応じて考えています。会う人や相手に敬意を表することが大切です。取材なら、少しでも媒体にとって良い影響があるよう、ふさわしい格好がしたいですね。人生はいつ終わるかわかりません。だからこそ、今この瞬間の目の前の人との出会いを大切にし、自分が良い影響を与えられるよう備えなければと思うのです。

スタイルを考えるうえで「人のために」という思想は非常に大事にしていて、私は「TPO」ではなく「TPPOS」を心掛けています。「TPPOS」とは、Time(時間)、Place(場所)、Person (人)、Occasion(場合)、Style(スタイル)を加えたもの。いつ、どこで、誰と、何を、どんなスタイルをしていくのか。そのすべてを考えることで、自分のスタイルを決めるようにしています。単純にセンスがあればかっこよくできるという話ではないのです。

私があまり新しい服を買う必要がないのも、すでにワードローブの中に、相手の失礼にあたらない、もしくは、相手のためになる服が揃っているからでもあります。

ーー干場さんは過去、「TPPOS」を間違えてしまったこともあるのでしょうか?

もちろん、ありますよ(笑)。

当時、創刊に携わっていた男性ファッション誌『LEON』が穴あきのクラッシュジーンズに白いシャツというスタイルを取り上げていました。調子に乗った私はその格好でドレスコードのあるホテルに行き、「お客様、当ホテルでは穴のあいたジーンズはNGとされています。申し訳ございません」と言われたことがあります。

地中海クルーズに行った時も、18時以降に豪華客船のレストランにジーンズで行ってしまい、着替えさせられたこともあります。自分ではイケてると思っても、ドレスコードに引っかかる、という経験はたくさんしてきましたね。

ーー自分の「型」は一度見つかると、そうそう変わるものではないのでしょうか?

そうですね。基本的にはひとつ見つかればそのひとつを研ぎ澄ましていくのが大切だと考えています。

たとえば、ボブという髪型一つとっても、前後のバランス、カラーリング、分け目次第で、自分のスタイルを追求できます。また、一度自分に似合う髪型が決まっても、年齢に応じて少しずつ変えて行くなどの挑戦も必要です。

要するに、自分の一番理想の状態を探し続けることが重要で、それはファッションだけでなく、料理、車、時計、生き方まで含め、人生のすべてにおいて大事だと言えるのではないでしょうか。

スーツは、自分が一番自分らしくいられるスタイル

ーー干場さんがとくによく着るのはどんな服なのでしょうか?

仕事の場合は、ほとんどがスーツです。お会いする方々への敬意でもありますし、誰にお会いしても恥ずかしくないからです。自分のワードローブの中で、自分が一番自分らしくいられるスタイルですね。

その背景には、そもそも父も祖父もテーラーで、スーツを着るということに対して見慣れていたこともあります。幼い頃は、動きにくいこともあり、堅苦しい服を着るのがすごく苦手でした。

それが中学生、高校生と物心がつき、社会人になっていくにつれ、海外の洋服を着るようになり、それに伴って自分にとって一番かっこいいスタイルって何だろうと考えるようになりました。

考えるうちに誰を目標にすればいいのかが見えてきて、映画の俳優なんかを参考にするようになりました。とくにジェームズ・ボンドは本当に格好良くて……。スーツやタキシード、水着もすべてのスタイルが格好良かったのでスーツを見直すようになりました。

幼い頃は、父親の職業を毛嫌いしていのですが、だんだんと「スーツが似合う」=「カッコイイ」と頭が切り替わっていったんです。

ーーファッション雑誌の編集者になったのも、お父さまの影響があるのでしょうか?

そうですね。父が作ってきたスーツのかっこよさに気付いたり、ファッションが好きだった大親友の影響で雑誌の編集者という仕事を選びました。20歳の時に編集者になって以来27年近くずっと、メンズファッションに携わっています。

「信頼×デジタルデバイス」が、これからのメンテナンスサービスには求められる

ーー服をメンテナンスするとき、心がけていること教えてください。

信頼している、高い技術を持っているクリーニング屋さんに頼むことです。

たとえば、素材によってはプレスのあて方次第で立体感が失われてしまい、イマイチに見えるものもあります。立体感を損なわず、アイロンを当てるのは高い技術が求められますが、それができるか否かが、信頼するうえで重要な要素になります。仕上がりが気に入らない場合は、クリーニングから戻ってきた服を全部プレスし直すこともあります。

いつもお願いしているクリーニング屋さんには、「ここにアイロンを当てないでください」とお願いしたりもします。面倒臭い客だと思われているかもしれませんが、次に頼んだときはちゃんとオーダー通りに仕上げて下さり、その繰り返しで信頼できるようになっていきました。

ーーリネットのサービスを使ってみての感想を教えてください。

スーツとシャツを預けたのですが、ともにきれいに仕上げていただきました。宅配の方が時間通りなのも素晴らしかったです。細かく時間指定ができるのもいいですね。初めての利用ということもあり、ボタンの上のラペルに一部アイロンをかけ直すことがありましたが、リネットではお仕上げし直しますよと言っていただきました。

職業柄もあって仕上げへのこだわりがあるので、今後は注文時に自分の仕上げのこだわりはコメントを入れるようにして、デジタルサービスであってもコミュニケーションを取りながら活用していくのがサービスとの良い関係作りだと思います。リネットとそんな関係が作れたら良いと思い、また申し込んでいます。

今の時代ですので、信頼関係だけでなくデジタルをきちんと活用していることも、クリーニング屋さんを選ぶ際に重要なポイントだと思います。私自身、長い間紙の雑誌に携わってきましたが、最近はWEBコンテンツを作ったり、Youtubeを活用して「動く雑誌」も作っています。WEBを利用することに抵抗はなく、むしろそっちの方が良いものがつくれるのではとも感じています。

これからの服のメンテナンスに携わるサービスは、デジタルデバイスと信頼とが掛け合わされたとき、初めて、需要が生まれるのかなと思います。

●Profile
『FORZA STYLE』 編集長/ファッションディレクター/
株式会社スタイルクリニック代表取締役社長
干場 義雅(Yoshimasa Hoshiba)
東京で3代続くテーラーの家に生まれ『MA-1』、『モノ・マガジン』、『エスクァイア日本版』などの編集を経て『LEON』の創刊に参画。その後『OCEANS』を創刊し副編集長兼クリエイティブディレクターを務める。2010年にフリーランスのファッションディレクターとして独立。現在は講談社のWebマガジン『FORZA STYLE』の編集長として活躍。著書に『干場義雅が愛する究極のブランド100+5』(日本文芸社)、『世界のビジネスエリートは知っている お洒落の本質』、『色気力』(集英社文庫)などがある。

  • この記事を書いた人

リネットマガジン編集部

リネットマガジンの編集・執筆担当。面倒くさがりの「ナマケモノ」ゆえに、効率よく省エネで生きることには熱心。 お洗濯がメンドクサイと思っている仲間のために、「時短で、ラクに、キレイになるリアルに使える洗濯術」を紹介しています。

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