光沢が美しく、肌触りが気持ちよい高級素材、シルク(絹)。シルクのパジャマやシャツは憧れのアイテムですよね。一方で、取り扱いが難しそうで、なんとなく買うのをためらってしまう……という方もいるのではないでしょうか。
実際、シルクは洗濯するとトラブルが起こりやすいアイテム。洗濯すると肌触りが悪くなってしまったり、光沢がなくなったり、変色してしまったりすることもあります。せっかく手に入れたシルクが、一度の洗濯で台無しになってしまったら、ショックでたまらないですよね。
そこで、シルクは洗濯できるのか不安に思っている方のために、お手入れのポイントを解説!失敗しない洗濯のポイントや、普段のお手入れ方法や保管方法をご紹介します。
シルクってどんな素材?
シルクとは、蚕(かいこ)の繭(まゆ)から作られる天然繊維のことです。1個の繭から約1,000mもの糸を取ることができ、シルクはその非常に細い糸を紡いで作られます。
人間の肌と同じタンパク質でできているシルクは、身につけたときの肌なじみがよいため、シャツやストールの他にも、肌着や寝具などにも使用されています。
シルクの特徴
シルクは、美しさだけではなく、機能性も兼ね備えた素材です。
- 深みのある光沢が美しい
- 肌触りがよく、敏感肌の人でも身につけられる
- 保湿性が高く、静電気が起きにくい
- 紫外線を吸収し、肌を守る効果がある
- 吸湿性・放湿性に優れているため、夏は涼しく冬は暖かく着られる
一方で、シルクはデリケートなため、次のような注意点もあります。
- 摩擦に弱く、毛羽立ちやすい
- 紫外線で変色しやすい
- 表面が傷つきやすく、目立ちやすい
シルクが高級素材とされる理由
シルクが高級素材とされる主な理由は、次の2つです。
- シルクを作るのにかかるコスト
- 素材としての人気の高さ
まずシルクの原料である繭を得るには、約1ヶ月かけて蚕を育てる必要があり、餌代や手間もかかります。さらに、繭からシルクを作るときには、繭の全てが使えるわけではありません。中のさなぎや余分な糸を取り除かなければならないため、シルクとして使える部分も限られているのです。
また、シルクはその繊維特性から上品で深みのある光沢を持っています。肌触りがよい、通年で心地よく着られるといった特徴も相まって、古来から根強い人気を誇っている素材です。
こうした養蚕にかかる手間や時間、シルクとして使える部分の少なさ、人気の高さから、シルクは高級素材として扱われています。
シルクは洗濯できるの?
取り扱いが難しいといわれるシルクですが、結論、シルクの中でも洗濯できるものはあります。
ただし、シルクは元々水に弱い素材。水に浸けた状態で摩擦を受けると、変色・変質してしまう恐れがあります。
シルク洗濯の失敗例
シルクを洗濯したときに起こる失敗の具体例を紹介します。
白く変色してしまう
シルクを洗濯機で洗ったり、水の中で擦ったりすると、生地が白く変色してしまうことがあります。
濡れた状態でシルクを擦ると、主成分であるタンパク質の一部がバラバラになる「フィブリル化」が起こります。これにより光が乱反射して、白く見えるのです。
ガサガサして肌触りのよさがなくなる
シルクをお湯で洗ったり、乾燥機にかけたりすると、熱でタンパク質が変性して固くなってしまいます。
また、シルクを水に濡れた状態で擦ると「フィブリル化」という現象が起こり、主成分がバラバラにほつれて毛羽立ってしまいます。
肌なじみがよいことが特長のシルクが、ガサガサな肌触りになって、台無しになってしまうのです。
大切なシルクはクリーニングへ
シルクは、水に濡れて少し摩擦が起こるだけでも劣化してしまうほどデリケート。長く身につけたい、大切にしたいシルクの衣類は、自宅で洗わずにクリーニングに出すのが安心です。
クリーニング店でできる「ドライクリーニング」は、洗濯の失敗例で紹介した「フィブリル化」が起こりにくい洗浄方法です。またクリーニングでは、洗濯表示や衣類の状態を見て、シルクが傷みにくいベストな方法を判断して洗ってくれます。
クリーニング店によっては、シルクのようなデリケートな素材だと洗浄や仕上げに手間がかかるため、追加料金が必要なことも。事前に料金表を確認してくださいね。
シルクの洗濯方法
シルクは自宅の洗濯に失敗しやすい素材ですが、汚れたら毎回クリーニングに出すのはちょっと料金がもったいない……と思う方もいますよね。
そこで、「リスクは分かったけど、それでもシルクを洗濯したい!」という方のために、失敗しない自宅での洗濯手順をまとめました。
洗濯表示をチェックする
まずは洗濯表示を確認しましょう。次のような洗濯表示があれば、自宅での洗濯OKです。
ちなみに、洗濯表示で洗濯機OKと書いてあっても、シルクを洗濯機で洗うのはおすすめしません。シルクは摩擦に弱いため、洗濯機で洗うと繊維が毛羽立ってしまったり、白く変色してしまうリスクが高まります。必ず手洗いするようにしましょう。
また、次の洗濯表示がある場合には自宅で洗うのはNG。自宅で洗濯するのは諦めて、クリーニングに出すようにしてください。
手洗いで洗う
シルクを洗うときには、「おしゃれ着用洗剤を使うこと」「手洗いで洗うこと」の2つのポイントを守りましょう。
粉末洗剤や液体洗剤などの弱アルカリ性の洗剤は、タンパク質でできているシルクを変性してしまう恐れがあります。おしゃれ着用洗剤は中性で、さらに衣類を保護する成分が含まれているため、シルクを傷めにくいのです。
そして、手洗いで摩擦を最低限にしながら洗うことで、シルクの劣化を防ぐことができます。
用意するもの
- 洗面台(洗面器や風呂桶でもOK)
- 30℃以下の水(水温が高いと縮みやすくなるため、お湯はNG)
- おしゃれ着用洗剤
- タオル
洗う手順
- シルクの衣類をきれいにたたみ、ぴったりサイズの洗濯ネットに入れます。
- 洗面台に、水と規定量のおしゃれ着用洗剤を入れます。手でかき混ぜて、洗剤水を作ります。
- 1.を2.の中に沈めて、手でやさしく「沈める」「浮かせる」を2〜3回繰り返して洗います。
- 5分ほどつけ置きします。汚れが気になる場合は10分ほどつけ置きしましょう。
- 洗剤水を捨てて、洗濯ネットに入れたまま押して絞ります。
- 洗面台に水を張り、手でやさしく「沈める」「浮かせる」を4~5回繰り返してすすぎます。水を替えて、もう一度すすぎます。柔軟剤を使うときは、2回目のすすぎ時に入れるようにしましょう。
- 洗濯ネットに入れたまま押して絞り、タオルに挟んで水分を吸い取ります。
陰干しする
洗った後のシルクは、必ず日陰で干すようにしましょう。直射日光に当たると、シルクが紫外線の影響で変色してしまうことがあります。
またシルクは、ハンガーや洗濯バサミなどに吊るして干すと、自重で形崩れを起こしやすいです。平干しネットなどを使って、平干しするのがおすすめですよ。
平干しネットを用意できないときは、床にバスタオルを敷いて干す方法もあります。
- 床にバスタオルを数枚敷く
- 1.の上に洗ったシルクの衣類を広げて置き、形を整える
- 窓を開ける、サーキュレーターを当てるなどして、風通しをよくして干す
ちなみに、シルクの衣類を乾燥機にかけるのは絶対にNG! シルクの主成分であるタンパク質が熱で変性して、せっかくのシルクが固い質感になってしまいます。必ず自然乾燥しましょう。
アイロンをかける
シルクのシワが気になる……という場合は、アイロンをかけるのも手です。
熱に弱いシルクですが、ものによってはアイロンをかけてもOKです。洗濯表示を見て、アイロンをかけられるかどうかを確認しましょう。次のような表示があれば、アイロンをかけても大丈夫です。
また、次のような表示がある場合は、アイロンはかけないでください。
アイロンがけのポイント
シルクをアイロンがけする際に、スチームを使うのはNGです。スチームの水滴が染みになってしまう恐れがあります。必ず当て布をして、スチームなしでアイロンをかけましょう。
また、シルクは熱に弱く、また温度が高くなくても十分にシワを伸ばせるので、必ず110〜130℃程度の低温でアイロンがけするようにしてくださいね。
用意するもの
- アイロン
- アイロン台
- 当て布(白いハンカチなどもOK)
アイロンをかける手順
- アイロンを110〜130℃程度に設定します。
- アイロン台の上にシルクの衣類を乗せて、形を整えます。
- シルクの衣類の上から当て布をして、スチームなしでアイロンをかけます。
シルクのお手入れと保管方法
シルクも自宅で洗濯できるとはいえ、毎回手洗いするのは面倒ですよね。また、シルクは水に弱いため、頻繁に洗濯するのもあまりよくありません。
シルクを長くきれいに着用するためには、普段からお手入れに気を使うことが大切です。普段からできるお手入れや、長期保管するときのポイントをご紹介します。
シルクのお手入れのポイント
着用後は陰干しする
シルクの衣類を着用した後は、いすやハンガーにかけて陰干ししましょう。着用時にできたシワをある程度伸ばしたり、汗や湿気を飛ばしてシルクの劣化を防いだりする効果があります。
シルクのシャツやワンピースなどをハンガーにかける際は、肩に厚みのあるハンガーを使いましょう。針金ハンガーや厚みのないハンガーは、肩にハンガーの跡がついてしまう恐れがあるので、避けてください。
1〜2日おきに着用する
シルクの衣類を連続して着用すると、シワになりやすく、劣化も早くなってしまいます。
大切なシルクを長く着るためには、毎日着るのではなく、1日着たら1〜2日休ませるようにしましょう。
なるべく皮脂や汗をつけない
シルクは水に弱いため、長持ちさせるためには洗濯頻度を下げるのがベター。
シルクの衣類を着るときはインナーを着るなどして、なるべく皮脂や汗を直接つけないようにしましょう。
吊るして保管する
シルクの衣類は、ハンガーに吊るして保管するのがおすすめ。たたんで保管すると、シワができてしまいやすいです。
ハンガーに吊るす際は、衣類の形に合ったハンガーを選びましょう。ワンピースやシャツなどは、肩に跡がつかないように厚みのあるハンガーを使います。ストールやスカーフは、ネクタイやスカーフ用のハンガーを使うのがおすすめです。
シルクを長期保管するときのポイント
シルクは天然繊維と呼ばれる素材で、虫(衣類害虫)に食われやすいです。長期保管する際には、虫食いを予防するケアが大切です。
保管前にクリーニングで汚れを落とす
衣類害虫は、皮脂汚れやフケ、食べ物のカスなど、さまざまな汚れをエサにします。そのため、保管する前に汚れをしっかり落としておかないと、虫食いが起こりやすくなります。
自宅でシルクを洗うときは、優しく洗う必要があるので、しっかり汚れを落とすには限界があります。長期保管する前には、できるだけクリーニングに出して、汚れを一掃しておくのがおすすめです。
防虫剤と一緒に保管する
シルクと一緒に防虫剤を入れて保管すると、虫食いを予防する効果が期待できます。
防虫剤は、適当に使うのはNG。種類によって使い方や推奨個数が異なるので、パッケージ裏の使い方を守るようにしてください。また、防虫剤の効果を発揮させるためにも、収納ケースなどの密閉された空間で使うのがおすすめです。
虫食いについて詳しく知りたい方は、虫食いの原因と予防方法も参考にしてくださいね。
シルクを長持ちさせるために、正しく洗濯・お手入れしよう
シルクは見た目が美しく機能性も高い、高級素材です。一方、デリケートな素材でもあるため、洗濯すると失敗しやすく、お手入れには注意が必要です。
自宅で洗濯する際には、「おしゃれ着用洗剤を使うこと」「優しく手洗いすること」がポイント。洗った後は陰干しして、アイロンをかけるときには低温で当て布をしましょう。
また、頻繁に洗濯するのが難しいシルクは、普段のお手入れにも気を使いましょう。着用後は陰干しする、間隔をあけて着用するなどすると、シルクの劣化を防ぐことができます。また長期保管する際には、虫食いに注意してくださいね。
大切なシルクは、クリーニングにお任せするのもおすすめですよ。